事業譲渡契約、簿外債務と表明保証は大丈夫?
スモールM&A・個人事業の事業譲渡契約書を貼り付けるだけで、譲渡範囲・簿外債務・競業避止・表明保証・クロージング条件のリスク条項をAIが瞬時に抽出します。弁護士相談の前の一次スクリーニングとしてご活用ください。
ご注意: このページの情報は弁護士によるレビューではありません。 一次スクリーニングとしての参考情報であり、法的アドバイスを構成するものではありません。
こんなお悩み、ありませんか?
事業譲渡と株式譲渡のどちらが自分に有利か、違いが整理できていない
引き継いだ事業に簿外債務(未払賃金・PL・税務リスク等)が潜んでいないか不安
売主の競業避止義務をどこまで求められるか、逆にどこまで受け入れるべきか迷う
事業譲渡の事業譲渡契約書で特に重要な5条項
契約書レビュー時に必ずチェックすべきポイントを解説します。
譲渡対象資産の特定(積極財産と消極財産)
事業譲渡は『特定の事業に属する資産・負債・契約関係・ノウハウ等を一体として譲渡する』契約ですが、対象範囲の特定が極めて重要です。『当該事業に関する一切の資産負債』とだけ書くと、譲渡後に発覚した債務まで引き継ぐリスクがあります。対象資産を別紙で個別に列挙するのが実務標準です。
注意すべき表現
- !譲渡対象の個別リスト(別紙)がない
- !簿外債務(未払賃金・買掛金等)の取扱いが不明
- !引き継ぐ契約関係(取引先・賃貸借・ライセンス等)の承継方法が未規定
望ましい表現例
本事業譲渡の対象は、別紙『譲渡対象資産・負債目録』に記載の資産(固定資産・在庫・債権・知的財産権等)および負債(買掛金・未払金等)に限るものとする。別紙に記載のない一切の資産・負債・債務(簿外債務を含む)は、譲渡人に帰属する。譲渡人は、譲渡実行日時点で別紙以外の債務が存在しないことを表明保証する。
表明保証条項(レプワラ)と補償条項
事業譲渡契約の中核が『表明保証(Representations and Warranties)』で、売主が譲渡対象について真実性を保証する条項です。財務諸表の正確性、税務申告の適正性、訴訟不存在、知的財産の有効性、従業員の未払いなし等を保証し、違反があった場合は補償条項に基づき金銭補償します。これが不十分だと買主は事後にリスクを一方的に負います。
注意すべき表現
- !表明保証項目が抽象的または不足(財務・税務・訴訟・労働等)
- !違反時の補償額の上限・期間の規定がない
- !補償対象に『売主の認識する限り』の限定が過度に多い
望ましい表現例
譲渡人は、譲渡実行日時点で以下の事項について表明保証する:(1)財務諸表が一般に公正妥当な会計基準に従って作成され、実態を適正に反映している、(2)税務申告が適正に行われ、未払税金がない、(3)係争中の訴訟・行政処分がない、(4)知的財産権が有効に譲渡可能である、(5)従業員の未払賃金・退職金債務がない。違反があった場合、譲渡人は発生損害を補償する(補償上限:譲渡代金の30%、補償期間:クロージング後2年間)。
売主の競業避止義務(会社法21条)
会社法21条により、事業譲渡人は原則として20年間、同一市町村・隣接市町村で同一の事業を行うことが禁止されます。この期間・地域は契約で緩和または強化できますが、スモールM&Aでは実情に合わない場合が多く、合理的な範囲(5〜10年・特定エリア)に調整するのが実務です。
注意すべき表現
- !会社法21条の期間・地域の修正がないまま署名(20年は長すぎる)
- !競業避止違反時の違約金・差止めの根拠条項がない
- !売主の従業員・家族への拘束が欠落(実質的回避の余地)
望ましい表現例
譲渡人は、会社法第21条に基づく競業避止義務を修正し、本契約締結日から5年間、日本国内において譲渡対象事業と同一または類似の事業を、自らまたは他社を通じて行わない。譲渡人の配偶者・親族・関係法人を通じた実質的競業も禁止する。違反時、譲渡人は譲渡代金の20%相当額を違約金として支払う義務を負う。
従業員・取引先・顧客の承継(個別同意)
事業譲渡は株式譲渡と異なり、契約関係・従業員雇用・許認可が自動承継されません。従業員は個別に『転籍同意』が必要、取引先とは『契約地位の譲渡』について相手方の同意が必要です。承継に失敗すると、譲渡後の事業運営が機能不全に陥ります。
注意すべき表現
- !従業員の転籍同意取得の手順・期限が未規定
- !取引先への通知・同意取得の責任者が不明
- !許認可の再取得・承継手続きの計画がない
望ましい表現例
譲渡人は、本契約締結後速やかに、譲渡対象事業の従業員(別紙リスト)から譲受人への転籍同意を取得する。譲受人は、転籍同意を得た従業員について、従前と同等以上の労働条件で雇用する。取引先契約(別紙リスト)については、譲渡人と譲受人が連名で相手方に通知し、契約地位の譲渡について書面同意を取得する。許認可については、別紙記載の手続きを譲受人が責任をもって進める。
クロージング条件と前提条件の不充足時の対応
事業譲渡契約は『契約締結日』と『クロージング日(譲渡実行日)』を分け、その間に必要な手続き(同意取得・許認可・デューデリジェンス等)を完了させるのが通常です。クロージング条件(前提条件)が充足されない場合の対応(契約解除・代金調整・延期)を明示する必要があります。
注意すべき表現
- !クロージング条件の列挙が不完全
- !条件未充足時の対応ルール(解除・代金減額等)が不明
- !契約締結からクロージングまでの行為規制(MAC条項等)がない
望ましい表現例
本契約のクロージング(譲渡実行)は、以下の条件が全て充足されることを前提とする:(1)従業員の転籍同意取得、(2)主要取引先の契約地位譲渡同意、(3)必要な許認可の承継または再取得、(4)表明保証内容の真実性維持、(5)重大な業績悪化(MAC事由)の不発生。クロージング予定日までに条件が充足されない場合、両当事者は協議の上、期日延長または契約解除を選択できる。
よくある失敗
簿外債務の表明保証を十分に設計せず、譲渡後に未払賃金・税務リスクを引き継ぐ
従業員の転籍同意を取得しないまま譲渡を進め、事業運営が停止する
会社法21条の競業避止が20年適用されることに気付かず、売主側が過剰に制約される
業界特有の事情
事業譲渡は、M&A手法の一つとして株式譲渡と並ぶ主要な選択肢です。中小企業庁『中小M&Aガイドライン』(2020年策定・2024年改訂)、事業承継・引継ぎ支援センターの活動、経産省の『スモールM&A』推進施策により、個人事業主・中小企業間の譲渡事例が急増しています。会社法21条の事業譲渡人の競業避止義務、法人税法・所得税法の譲渡所得課税、消費税・不動産取得税・登録免許税等の課税関係、労働契約承継法の適用有無(労働契約承継法は会社分割のみ、事業譲渡は民法上の転籍手続)が主要な法的フレームワークです。実務では表明保証・補償・クロージング条件の設計がディール成否を左右し、弁護士・公認会計士・税理士のチーム体制でのDD(デューデリジェンス)が不可欠です。2024年以降は、生成AI活用のM&Aマッチングプラットフォームの台頭で、スモールM&Aの敷居が下がる一方、契約書ひな型の質にばらつきがあり、AI一次レビューの需要が高まっています。
契約書チェックリスト
契約書を確認する際に、以下の項目をチェックしましょう。
よくある質問
事業譲渡と株式譲渡、どちらが買主に有利ですか?
一般的には事業譲渡が買主に有利とされます。事業譲渡は対象資産を個別に指定できるため、簿外債務・訴訟リスク・不要資産を切り離せます。一方、株式譲渡は手続きが簡便で許認可の再取得不要ですが、会社に残る全リスクを引き継ぎます。売主側は株式譲渡が税務上有利な場合が多いため、両者の利害調整がディールの焦点になります。
簿外債務のリスクをどう防げばよいですか?
(1)デューデリジェンス(DD)で帳簿外の債務を調査、(2)譲渡対象を別紙で個別列挙し『別紙以外は譲渡対象外』と明示、(3)表明保証で『簿外債務が存在しない』ことを売主に保証させる、(4)補償条項で違反時の賠償請求権を確保、(5)譲渡代金の一部をエスクロー(第三者預託)して一定期間保全、という5段階で防御します。これらを全てカバーするのが安全な契約書の基本形です。
売主の競業避止義務は会社法21条でどう決まっていますか?
会社法21条では、事業譲渡人は原則として20年間、同一市町村および隣接市町村で同一事業を行ってはならないとされます。契約で期間を30年まで延長可能、逆に短縮・免除も可能です。実務では5〜10年・特定の事業領域に限定するのが一般的で、20年は売主にとって長すぎることが多いため交渉ポイントになります。違反時の違約金額も契約書で予め定めておくと紛争を防げます。
従業員は事業譲渡で自動的に移籍しますか?
事業譲渡では自動移籍しません。従業員一人ひとりから転籍同意を取得する必要があります(民法625条)。雇用条件が大きく変わる場合は同意が得にくく、キーパーソンが転籍しないと事業運営に支障が出ます。事前に従業員説明会・個別面談で丁寧に説明し、従前と同等以上の労働条件を提示することが実務的に重要です。会社分割の場合は労働契約承継法により自動承継ルールがあります。
表明保証違反が発覚した場合、いつまでに請求できますか?
契約書の補償条項で定める期間内です。一般的には『クロージング後1〜2年』が目安で、税務事項については『法定申告期間の消滅時効まで』(最長7年)、労働事項については『賃金請求権の消滅時効まで』と長めに設定されることもあります。補償上限額(通常は譲渡代金の10〜30%)も契約で定めます。期間経過後は原則として請求できないため、DD段階でのリスク発見が重要です。