知的財産

「成果物の著作権は甲に帰属」は本当にサインしていいのか?著作権譲渡条項の罠

CClauseLens
9分

本記事は一般的な解説であり、個別の法的助言は弁護士にご相談ください。

業務委託契約書でほぼ必ず目にする条項。

乙が本業務により作成した成果物の著作権(著作権法第27条・第28条の権利を含む)は、納品と同時に甲に帰属する。乙は著作者人格権を行使しない。

読み飛ばしたくなる短さですが、フリーランス・個人クリエイターにとって、もっとも不利になりやすい条項の1つです。この記事では、著作権譲渡条項の意味と、現実的な対処法を整理します。

💡 あなたの契約書の著作権条項を5分でAIチェック → ClauseLensで無料レビュー


先に結論

  • 譲渡してしまうと、自分で過去作を使い回せなくなる(ポートフォリオ・派生作品の問題)
  • 著作権法27条・28条(翻案権・二次的著作物の利用権)は特別に「含む」と書かないと譲渡されない
  • 全譲渡を避ける代替案として 「独占的ライセンス」「利用目的限定」 がある
  • 著作者人格権の不行使は慎重に

そもそも著作権譲渡とは

著作権は、創作した瞬間に作った人(著作者)に自動的に発生します。それを契約で別の人(多くは発注側)に渡すのが「譲渡」です。譲渡すると、その後は譲受人(発注側)が自由に使える一方、譲渡した側は自分の作品を自由には使えなくなります

典型的な影響

  • ポートフォリオに載せるのに元クライアントの許可が要る
  • 同じ作品を他のクライアントに売ることは当然できない
  • 派生作品・改変版を作って売るのも原則不可
  • SNSで一部を使うのも形式上は許諾が必要

罠1: 第27条・第28条は「含む」と書かないと譲渡されない

著作権法61条2項に「27条(翻案権)、28条(二次的著作物の利用権)は、特に明記がなければ譲渡したものと推定されない」という規定があります。

つまり、契約書に

成果物の著作権は甲に帰属する。

とだけ書いてあれば、翻案権(改変して使う権利)は受注側に残ると解釈される余地があります。 多くのテンプレートは発注側の不利にならないよう「著作権(第27条及び第28条の権利を含む)」と明記していますが、この括弧書きがない契約は、受注側に有利です。

対策

  • 括弧書きの削除を交渉
  • 譲渡ではなく「独占的ライセンス」に置き換える提案

罠2: 著作者人格権の「不行使特約」

乙は著作者人格権を行使しない。

著作者人格権は、

  • 公表権(いつ公表するか決める権利)
  • 氏名表示権(著者として名前を出すか決める権利)
  • 同一性保持権(作品を勝手に改変されない権利)

の 3つ。法律上譲渡不可ですが、「行使しない」と契約で約束することは可能です。

何が問題か

一度「行使しない」と約束すると、

  • 勝手にトリミングされても文句を言えない
  • 著作者名を別人に変えられても文句を言えない
  • AI学習データに使われても文句を言えない

対策

  • 「原則行使しない。ただし、作品の本質を毀損する改変、および著作者に著しい不利益を及ぼす利用については行使できる」などの但書を追加
  • 氏名表示権だけは留保する文言を追加(「クレジット表記はこうする」と具体的に決める)

罠3: ポートフォリオ利用の書き込み忘れ

譲渡してしまうと、自分が作ったのに自分の実績として見せられないという悲劇が起こります。

対策

以下の文言を必ず追加:

乙は、本業務で作成した成果物を、自己の実績・ポートフォリオとして第三者に提示することができる。ただし、顧客情報・非公開情報は含めない。

これだけで、Web サイト・note・SNS・案件提案資料で実績として使えるようになります。

罠4: 納品前の仮譲渡

成果物の著作権は、創作と同時に甲に帰属する。

「納品前から」発注側に帰属するパターン。支払いがないうちから権利だけ取られる可能性があります。

対策

成果物の著作権は、報酬の完済をもって甲に帰属する。

の 1 行で、支払いを受けないうちは著作権は受注側に残る状態になります。支払い遅延対策としても有効。

代替案:譲渡せずに「独占的ライセンス」にする

全譲渡の代替として、**独占的ライセンス(exclusive license)**を提案できます。

  • 著作権は受注側に残る
  • でも、発注側が独占的に利用できる
  • 期間・地域・用途を限定できる
  • 受注側はポートフォリオ利用・派生作品制作の権利を持てる

発注側にとっても、「利用する権利」が確保できていれば譲渡である必要はないケースが多いので、交渉の余地は意外とあります

契約文の例

乙は甲に対し、成果物について、日本国内における、Webサイト・広告・SNSでの利用を目的とする、期間 5 年間の独占的利用権を許諾する。乙は、本件成果物を自己のポートフォリオとして第三者に提示することができる。


実際の交渉フレーズ

「今回の制作にかなり時間をかけて、私独自の表現も多く含むので、全譲渡はしない形にさせていただきたいのですが、御社の業務に必要な範囲は独占的にお使いいただけるようライセンスする形ではいかがでしょうか」

この程度のトーンでも通るケースは結構あります。ダメ元でも提案しない手はないです。


まとめ

  • 著作権譲渡条項は「1行の契約だけど重大」
  • 第27条・第28条を含むか著作者人格権不行使ポートフォリオ利用対価完済との関係が論点
  • 全譲渡の代替案として 独占的ライセンス を提案する
  • どうしても譲渡を求められる案件は、価格に著作権譲渡分を上乗せする

💡 あなたの契約書の著作権条項を今すぐチェック → ClauseLensで無料レビュー

次に読むなら

タグ

著作権業務委託契約書成果物フリーランスポートフォリオ

この記事で解説した条項をAIでチェックしませんか?

ClauseLensなら、契約書を貼り付けるだけで不利な条項・曖昧表現・抜け漏れを30秒で指摘します。

無料でレビューを試す
C

ClauseLens編集部

AIによる契約書レビューサービスを運営しています。