共同開発NDA、バックグラウンド情報の切り分けは大丈夫?
研究開発・ソフトウェア共同開発・製造委託の前段で締結するNDAを貼り付けるだけで、バックグラウンド情報の保護・共同成果の権利帰属・発明者の扱いをAIが瞬時に抽出します。弁護士相談の前の一次スクリーニングとしてご活用ください。
ご注意: このページの情報は弁護士によるレビューではありません。 一次スクリーニングとしての参考情報であり、法的アドバイスを構成するものではありません。
こんなお悩み、ありませんか?
自社既存技術(バックグラウンド情報)が共同開発中に相手方のものとして主張されないか不安
共同開発で生まれた発明の権利帰属があいまいで、後のビジネス展開の見通しが立たない
決裂後も相手が類似技術開発を続けそうで、不正競争防止法で守れるか不明確
共同開発のNDA(秘密保持契約書)で特に重要な5条項
契約書レビュー時に必ずチェックすべきポイントを解説します。
バックグラウンド情報とフォアグラウンド情報の区別
共同開発では、各社が持ち込む既存技術(バックグラウンド情報)と、共同開発で新たに生まれる成果(フォアグラウンド情報)を明確に区別する必要があります。この区別がないと、自社の既存技術が共有された時点で相手方の資産とみなされ、共同開発終了後も自社が独自展開する権利を失うリスクがあります。
注意すべき表現
- !バックグラウンド情報とフォアグラウンド情報の区別がない
- !共同開発で使用した全情報が共同帰属となる条項
- !バックグラウンド情報の開示範囲・保護義務の記載がない
望ましい表現例
本契約において、(1)『バックグラウンド情報』とは、各当事者が本契約以前から保有し、または本契約と独立して取得する情報・知的財産をいう。(2)『フォアグラウンド情報』とは、本共同開発により新たに創出される情報・発明・著作物をいう。バックグラウンド情報の権利は各当事者に留保され、フォアグラウンド情報の権利帰属は別途定めるものとする。
共同開発成果(フォアグラウンド)の権利帰属
NDA段階では本格的な権利帰属は共同開発契約で定めますが、NDAでも『NDA締結中に偶発的に生まれた発明・着想』の扱いを示しておく必要があります。『本契約期間中のあらゆる発明は共有』だと、相手方単独の着想まで共有されてしまい、その後の共同開発契約交渉が硬直化します。
注意すべき表現
- !『本契約期間中に生じた一切の発明・着想を共有』
- !本契約範囲外で独自に生じた発明まで含む
- !発明者主義を完全に無視する条項
望ましい表現例
本契約期間中に生じた発明・考案・著作物については、以下のとおり取り扱う:(1)単独で創作した場合は創作者の所属当事者に帰属、(2)共同で創作した場合は共有とし、具体的な持分・実施条件は別途共同開発契約で定める。発明者の認定は、特許法上の発明者主義に従うものとする。
検討範囲の特定と目的外使用禁止の具体化
共同開発NDAの『目的』は、共同開発の検討対象を具体的に特定することが重要です。『両社の事業連携の検討』のような抽象的記載だと、受領した情報を自社単独での類似開発に流用された際に、『目的外使用』を主張しにくくなります。技術分野・製品領域・検討フェーズを具体化すべきです。
注意すべき表現
- !『両社間の取引・業務連携の検討』という抽象的な目的規定
- !検討対象の技術分野・製品が特定されていない
- !目的外の研究開発活動への転用禁止の明示がない
望ましい表現例
本契約の目的は、以下の具体的共同開発テーマの実現可能性検討に限る:(対象テーマ:○○センサーを活用した△△システムの共同開発)。受領者は、本契約に基づき取得した秘密情報を、当該検討以外の目的(自社単独での類似製品開発、他社との類似開発検討等)に使用しない。
秘密情報の範囲(技術情報・営業情報の切り分け)
共同開発では技術情報(設計図・ソースコード・ノウハウ)と営業情報(顧客・価格・販売計画)が混在します。両方を一律に扱うと管理が煩雑になり、特に営業情報の秘密管理が甘くなりがちです。技術情報と営業情報を区別して、それぞれの管理義務・期間を定めるのが実務的です。
注意すべき表現
- !技術情報と営業情報が区別されず一律管理
- !技術情報の複製・保存場所(サーバー等)に関する制限がない
- !営業秘密の秘密管理要件(不正競争防止法)を満たさない管理義務
望ましい表現例
秘密情報は以下に分類し、それぞれの管理義務を定める:(1)技術情報(設計図・ソースコード・実験データ等):関係者アクセス制限、物理的隔離、複製記録の管理、(2)営業情報(顧客・価格・販売計画等):閲覧者の限定、電子ファイルの暗号化、持出し禁止。両情報とも、不正競争防止法上の『営業秘密』として管理するものとする。
決裂・契約終了時の情報返却と『残存する制約』
共同開発検討が決裂した場合、各社が独自に類似開発を進める可能性があります。NDA終了後の『目的外使用禁止』『類似開発禁止』をどこまで残存させるかで、その後の事業展開の自由度が大きく変わります。過度な残存条項は独占禁止法上の問題(相互の事業制限)にもなり得ます。
注意すべき表現
- !契約終了後『5年間は類似開発禁止』という長期の事業制限
- !返却・廃棄義務の実行方法(証明書提出等)が不明
- !『当該分野での研究開発を行わない』という包括的禁止
望ましい表現例
本契約が目的不達成により終了した場合、受領者は30日以内に秘密情報(全ての複製含む)を返却または廃棄し、廃棄証明書を開示者に提出する。契約終了後も、受領した秘密情報の目的外使用禁止および秘密保持義務は3年間存続する。ただし、受領者が独立して開発する類似技術・類似製品の研究開発自体は制限しない。
よくある失敗
バックグラウンド情報の切り分けをせず、自社既存技術まで共同帰属と扱われる
共同開発で生まれた発明の帰属ルールが曖昧なまま、本格開発に進んでしまう
決裂後の類似開発禁止が長期すぎる条項にサインし、その分野での事業展開を制約される
業界特有の事情
共同開発NDAは、製造業・IT・バイオテック・ヘルスケア等の技術提携で必須の契約書です。経済産業省『研究開発・契約ガイドライン』や特許庁『オープンイノベーション促進のための契約ガイドライン』(2020年策定、2023年改訂)が参考基盤となります。実務では、NDAの段階で完全な権利帰属を決めず『共同開発契約で別途定める』とする一方、バックグラウンド情報とフォアグラウンド情報の区別は必ず明記します。2024年以降は生成AI活用の共同開発が増え、『AI学習用データの権利帰属』『モデル重みの帰属』『プロンプト・出力の著作権』といった新論点が追加されています。また大企業とスタートアップの共同開発では、経産省『共同研究契約のモデル契約書(スタートアップ・大企業連携)』も参照すべきです。独占禁止法・下請法の観点からも、大企業側の過剰な権利主張は規制対象になり得ます。
契約書チェックリスト
契約書を確認する際に、以下の項目をチェックしましょう。
よくある質問
共同開発で生まれた発明の帰属はNDAで決めるべきですか?
NDAでは原則論のみ示し、詳細は別途『共同開発契約』で決めるのが実務です。NDAに『単独創作は創作者帰属、共同創作は共有』という発明者主義に基づく原則だけ書いておきます。本格的な権利帰属(持分割合・実施条件・改良発明の扱い)は、共同開発契約で個別事案に応じて定めます。特許庁モデル契約書も参考になります。
自社の既存技術(バックグラウンド)を共有した場合、相手に使われる権利は発生しますか?
NDAで明確に『バックグラウンド情報の権利は各当事者に留保』と規定していれば、相手には本共同開発の検討目的の範囲内での使用権のみが認められます。共同開発が決裂した場合、バックグラウンド情報の使用権も消滅します。この切り分けが甘いと、後で『共同開発で使った時点で共有された』と主張されるリスクがあります。
共同開発検討が決裂した後、独自に類似技術の開発をしてよいですか?
NDAに『独自開発の自由』を明記していれば可能です。ただし、相手のバックグラウンド情報や共同で得た成果に由来する内容は使用できません。『秘密情報に由来しない独立開発』であることの証拠(開発記録・日付入り設計書等)を残しておくのが紛争予防に有効です。大企業相手の場合、独占禁止法の優越的地位濫用の観点からも過剰な事業制限は無効化されます。
共同開発の成果を特許出願する場合、発明者は誰になりますか?
特許法上の発明者は『実質的に創作に寄与した自然人』です。契約書で勝手に変更することはできません。共同で創作した場合は、各発明者の所属企業が持分を共有する形になります。出願手続き・費用負担・実施の権利行使は別途定める必要があるため、本格的な共同開発に進む際は共同開発契約で詳細化します。
生成AIを活用した共同開発では、学習データの権利帰属をどう扱いますか?
新しい論点で業界慣行が形成中です。実務では『学習データ(バックグラウンド)は提供元に帰属、共同で作成したプロンプト・出力データ(フォアグラウンド)は共有または個別定義、モデルの重みは共同開発契約で別途定義』といった区分が増えています。AI出力物の著作権については日本の現行法上グレーな領域があるため、契約で明示的にルール化しておくことが重要です。